電子顕微鏡による微細組織・結晶構造解析
STEMを用いた原子スケール化学分析
走査透過型電子顕微鏡(STEM)は入射電子ビームを1原子以下の大きさに絞り、捜査しながら透過電子像、散乱電子線、特性X線を検出し、1Å以下の分解能で試料を観察することができる顕微鏡です。ミスフィット型層状酸化物Ca3-xSrxCo4O9のSr占有サイトの決定するために下図左のJEOL JEM-ARM200Fを用いて観察を行いました。 右図のCa-K線とSr-L線の最大強度位置が一致するので、Srは岩塩層のCaサイトに置換されていることが分かりました。


ALCHEMI法による原子配列の解析
電子チャンネリング原子位置決定法 (ALCHEMI) を利用した三元以上の多成分系の原子配列を決定する研究を行っています。 ドーパントとしてMnを添加したβ-FeSi2は非常に高いP型の熱電特性を示します。β-FeSi2は下図のようにFeⅠサイト、FeⅡサイト、Siサイトからなります。この時Mnはどのサイトに占有しているのかをALCHEM法を用いて決定することができます。 ALCHEMI法を用いて下図のようにMnはFeⅠサイト、FeⅡサイトに分配されることが分かりました。


熱電エネルギー変換材料の開発
熱電エネルギー変換は、熱を電気に直接変換する技術です。このため、二酸化炭素など、変換時に発生する廃棄物が一切なく、環境にやさしいクリーンなエネルギー供給技術として注目されています。 エネルギー変換効率は無次元性能指数ZTの関数で、大きなZTをもつ熱電材料の開発が必要です。 無次元性能指数ZT = S 2 T /ρκ 大きなZTには、大きなゼーベック係数S、小さな電気抵抗率ρと小さな熱伝導度κを実現する必要が有ります。つまり金属、半導体、絶縁体の相矛盾する性質を同時に兼ね備えた物質の探究が不可欠となり、いろいろな工夫を凝らして材料開発が世界中で行われています.

形状記憶合金における相変態メカニズムの解明
形状記憶合金は大きく変形させても加熱する,または力を取り除くだけで元の形状に回復することのできる不思議な金属材料です.特に,力を取り除くだけで形状が回復する場合には,通常の金属材料よりも大きな弾性変形が可能であることから「超弾性」と呼ばれます(下図).超弾性を発現する形状記憶合金は医療用デバイスから建築,宇宙工学に至るまで様々な場所で利用されており,更なる用途拡大が期待されています.

形状記憶効果や超弾性は,熱弾性マルテンサイト変態と呼ばれる相変態を通じて発現します.したがって,より高性能な形状記憶合金の開発のためには相変態のメカニズムを解明することが重要です.本研究室では電子顕微鏡を用いて相変態を様々なスケールで観察し,応力あるいは冷却・加熱に対して組織や結晶構造がどのように変化するのかを明らかにするべく取り組んでいます.
