化学・物質工学コース卒業生・修了生の進路と就職活動状況

(1)本コースからの就職状況

 本コースでは、毎年卒業生の70%前後は大学院に進学し、さらに化学・物質工学・材料分野の学究を深めます。一般に、化学・物質工学の分野の企業において、研究・開発職や製造現場リーダーを目指すなら、修士修了以上の人材を求める企業が圧倒的に多く、生涯賃金も高くなる実情があります。一部企業は博士号取得者を求めることも少なくありません。修士修了生は、卒業研究も含め本コースの研究室での3年間の主体的研究活動で鍛えられて入社するため、即戦力になるだけでなく、確かな実力を持ち広い視野を持って将来に亘って変化に対応し、企業のために貢献できると期待されています。もちろん、学部卒で活躍する卒業生も少なくありません。一例ですが、卒業生のA君は、医薬品販売営業職に就職しましたが、化学の知識の豊富さと英語力が買われ、2年後に研究職に抜擢され、さらに数年後には外資系医薬品大企業から引き抜かれて、創薬の第一線で活躍しています。

 本コースでは、企業への就職を希望し、真剣に就職活動を行った学生のほぼ100%が卒業・修了までに就職先を決定しています。

 本コースからの就職先は、化学・材料・金属系企業が相当の割合を占めますが、関連異分野や医療・医薬系、自動車、総合製造業へ就職する学生も毎年います。卒業研究や修士論文研究で攻究した専門分野に近い就職先を目指す学生もいる一方で、自動車や電機、分析系の企業などを中心に、勉学で培ったことを異分野で応用的に活かす就職を志向する学生も相当います。

 就職先の詳細は、(3)の項のデータで示し、説明します。本コースから様々な企業で活躍している修了生・卒業生の評判は各企業で高く、毎年、複数の卒業生・修了生を推薦してほしいと要望する企業が相当数あります。就職後に転職する場合もありますが、そのほとんどは、積極的かつ円満な、能力を買われての転職のようです。

(2)就職活動支援の実際

 本コースでは、進路指導の豊富な経験と見識をもつ教授が、その役割を担う「就職担当」になるとともに、全研究室の教員がきめ細かいサポートを、進学・就職を問わず全学生に対して行います。

 面談を含めた個々への指導の他、下のスキームで示したような、全体的な指導・支援を毎年行っています。

化学・物質工学コース全体での進路指導(個人支援を除く)

学部3年生博士前期課程Ⅰ年次
学部3年次に進学直後のオリエンテーション:(i) 進路指導や就職活動支援の概要を説明、(ii) 就職ナビゲーション関係業者とのコンタクトを作る機会の設定。 4月M1生に、進学入学直後オリエンテーション:(i) 進路指導や就職活動支援の概要を説明、(ii) 就職ナビゲーション関係業者とのコンタクトを作る機会の設定。
学業や研究活動に支障が出ない範囲で、企業のインターンシップへの参加希望が真摯である学生には活動を支援。 「インターンシップ」が1単位の科目となっています。常時学業や研究活動に支障が出ない範囲で、企業のインターンシップへの参加希望が真摯である学生には活動を支援。 「インターンシップ」が1単位の科目となっています。
「工場見学」の講義: 1泊2日で、九州北部の企業4~7社程度を見学。企業は毎年、異なりますが、多くの場合、製鐵、化学大手、金属、医薬品、高分子、精密材料などの企業が含まれる。 9月以降
「キャリア討論会」を開催: 本コースの修了生または卒業生3人に講演してもらい、勤務されている企業紹介だけでなく、就職活動の経験、在学中の勉学等がどのように就職先で活かされたか、就職先での活躍や苦労について話して頂き、在学生と密なディスカッション。 12月初旬「キャリア討論会」を開催: 本コースの修了生または卒業生3人に講演してもらい、勤務されている企業紹介だけでなく、就職活動の経験、在学中の勉学等がどのように就職先で活かされたか、就職先での活躍や苦労について話して頂き、在学生と密なディスカッション。
就職活動の指導方針等について詳細な説明会:学部卒での就職活動の説明。また、大学院に進学する意義や、将来の就職おける大学院での勉学・研究活動実績の位置づけについても説明。 12月〜1月就職活動の指導方針等について詳細な説明会:博士後期課程に進学する意義や、大学院生として必要な就活への取り組みも説明。

現在の経団連が定める指針に即し、2月末日から翌3月1日になると、未明から、企業サイトへのWeb登録を開始する学生の姿が、各研究室で見られます。

(3)主な就職先データ

こちらのページを御覧ください。

(4)企業からの求人

 平成30年3月以降、9月末までに、化学・物質工学コースに直接、コース指定で求人を求められて企業数は約210社、その内、実際にコースを訪問された企業数は、46社です。

 これ以外に、大学のキャリア支援センターへの求人は、2000社を超えており、この1/3以上が、工学部の本コースも求人対象になっているとみられます。

 企業からコースへの求人情報資料は、すべてコースの資料室に整えており、学生・院生はいつでも閲覧することができます。同時に、求人情報は届き次第、コース内専用のホーム・ページにアップロードしています。これは、学外からも閲覧することができます(VPNを通じて、PC、iPhone, iPad, Androidで可能。詳細はこちら

(5)大手企業が当コースに求めてきた人材の例

 平成30年度に、いわゆる大手企業から当コースに、「是非このような人材の学生を推薦してほしい」などとして要望があった事例を、多数の中から4例示します(企業が特定できないように示しますので一部、わかりにくいかもしれませんが了解ください)。

  • 大手企業A(自動車メーカの化学系求人): グローバル企業の研究・開発に携わる専門性の高い化学の実力を備えると当時に、TOIEC 700点相当以上の語学力を持った人材。
  • 大手企業B(電機メーカの化学・材料・分析系求人): 常に自分が企業や顧客に対してプラスアルファで何ができるかを考え、かつ、琴線に触れる提案が実際にできる化学・材料の専門性の高い実力がある人材。
  • 大手企業C(半導体メーカの化学・材料系求人): 世界のどこででも働ける人材、日本の半導体生産の優位性を理解している人材、ロボットや自動車自動運転用の半導体を出荷不良0%で作ることに妥協しないで執着・挑戦し続けられる人材。
  • 大手企業D(繊維最大手・化学・材料系求人):大学院生として相応しい知識と問題解決能力があることを、テストと口頭試問で示せることに加え、研究活動に関するプレゼンテーションに対してどんなに厳しい意見を多数の企業研究者たちからいきなりぶつけられても、自信をもってその場で対応し、ディフェンスだけでなく必要な強い反論もでき、さらに自己主張できる実力も持った人材。

 上記の他、大手ではありませんが、以下のような求人もあっています。

  • 九州内の造船企業E 「造船に化学系の専門職が欠かせない。作業環境の分析・測定、塗料の溶剤使用の指導、腐食・防食技術、塗料や内装用化学材料の選定などを総合的にこなせる化学を専門で習った学生が欠かせない。是非、推薦してほしい」
  • 金属材料の表面処理技術を誇る企業F 「金属材料を研究活動で扱ってきたが学生を採用したいが、他大学の修了生では、材料の知識はあっても、化学の実力が乏しい。西日本にあって、化学から金属材料まで幅広く深い教育をしている数少ない学科の中で、長崎大学の化学・物質工学コースは、化学~金属材料までを学び、広い視野と総合的即戦力のある学生を育てている代表格。出身者の活躍も特に目立っているので、是非、推薦してほしい。」

(6)企業からの人材養成に答えるための化学・物質コースの教育カリキュラム対応

 そもそも、長崎大学の化学・物質工学コースは、「材料応用への実力を備えつつ化学を専門にできる人材、化学の実力に裏打ちされた材料の専門力がある人材」を輩出することを使命としています。実際に、この教育方針については、多数の、化学・材料・医薬品・自動車・エネルギーその他の企業群から強い賛同の声を頂いています。

 以下には、企業からの多様な人材養成に応え、上記の使命を果たすための教育方針と実際は以下の通りです。

  • 学部生には技術英語4科目(全学年)、大学院生には実践英語4科目を配置し、実質上は全科目必修扱いとして英語力を徹底的に鍛えている。
  • 卒業研究の中間試問(学会さながらのポスター講演会)、博士前期課程の中間試問(口頭プレゼン)と総合演習(分野総括的な総説を、英文論文20報以上を読んでまとめ、発表する)で、課題発見解決能力を高度に養成している。
  • 特別講義で、企業の化学系品質管理に関するトップ開発者を非常勤講師としており、材料系学生も理解を深めている。また、化学系学生も、固体材料の高純度合成や欠陥論についても深く学んでおり、企業が求める物質生産レベルに対して即戦力となれる卒業生・修了生を輩出している。
  • 卒研と修士論文研究では、1ヵ月に1回の1時間以上の研究報告発表と質疑を行うことを全研究室で義務付けており、徹底的な研究討論を行っている。ここで鍛えた議論力は、全国規模の学会でも、旧帝大系学生に引けを取らない。

以下のような事例で、特に大学院生指導の成果が見て取れます(過去6年間)。

  • B君(大学院博士前期課程修了)は、ある自動車企業の学歴不問選考に合格しました。本人の実力のみに基づいた選考であり、他の合格者の多くは旧帝大系出身者だと聞いています。
  • C君(大学院博士前期課程修了)は、応募者1名に企業トップ研究者10名から次々と質問を浴びせられて答えなければならない厳しい最終面接で有名な化学系企業に応募し、これを突破して内定を勝ち取りました。

(7)博士号取得を目指した進学について

 化学・物質工学コースの卒業生から、過去5年間で、14名が、本学工学研究科5年一貫制グリーンシステム創成科学専攻に進学しています。この専攻は、標準履修年限5年間の課程で、博士号取得を目指す専攻です。詳細は、次からアクセスして下さい。

グリーンシステム創成科学専攻

 博士号取得を目指すには、博士前期課程を修了後、博士後期課程に進学するルートも用意されています。これは、標準履修年限3年間の課程で、博士号取得を目指す専攻です。

 化学・物質工学コースの研究室は、優秀な博士号取得者を輩出し続けており、多数が企業のトップ研究者として活躍しているほか、日本トップレベルの国の研究所での研究員(物質・材料研究機構、産総研)や、国立大学(東京大学、京都大学、東京工業大学、富山大学、本学ほか)をはじめとする教授・准教授・助教などとして、また地方の中堅高等教育機関の教員(福井県立大学、佐世保高専など)として、日本の化学・材料研究や若人の教育を牽引している修了生も相当数います。